今回は将棋について少し書いていきたいと思う。
僕が初めて将棋のルールを覚えたのは小学二年生の時だった。駒の動き方と大まかなルールしか載っていない一冊の薄い紙雑誌が僕を熱中させたのを覚えている。最近将棋界は賑やかだ。先日藤井聡太さんが棋聖と王位のタイトルを連続して獲得され、最年少で二冠を達成された。ついこの間まで藤井四段としてプロデビューをしたばかりだったにもかかわらず、既に将棋界の顔として活躍されている。
将棋には8大タイトルというものがあるが、それぞれのタイトル保持者と対戦できるのは毎回たった一人のみ。何十人ものプロ棋士が参加する予選、さらに勝ち抜いた棋士で行われるトーナメントを勝ち抜いてようやく一騎討ちとなる。過去に羽生善治現九段が八つあるタイトルのうち七つを手にしたことがあるが、藤井二冠なら全タイトル制覇も夢ではないような気がしてくる。
さて、現代将棋はコンピューターの進歩によってガラリと変わったようだ。常に最善の手をコンピューターが計算し、盤面の良し悪しは数字によって評価されるようになったからだ。過去にはコンピューターとプロ棋士を対戦させる電王戦たるものがあったが、コンピューターの実力が人間を抜き去ると電王戦が開催される事はなくなった。現在ではプロ間のみならずアマチュア間でも将棋研究にコンピューターの解析が広く取り入れられるようになった。
そんななか、タイトル戦で藤井二冠(当時七段)が指した手はAI越えの一手として世間を大きく揺るがせた。将棋ソフトは2億手を解析した時点で藤井二冠の指した手を悪手として評価したが、6億手を読ませた瞬間なんとその手は最善手となり評価が覆った。これまでコンピューターの能力を過信しプロ棋士を比較的過小評価してきた将棋界において、改めて棋士の持つ潜在能力について考える機会なのではと思う。
藤井さんの活躍は僕だけではなく多くの将棋ファンの心を躍らせたに違いない。コンピューターでも解析しきれないその膨大な選択肢の中から人間が正解を導いたという事実にロマンを感じないはずがない。速さを頼りにしらみ潰しに計算するコンピューターとは違い、人間ならではの直感やそういった類の能力はきっとあるんだと思う。訓練されたプロのトップレベルとなれば尚更、僕はそういうものを信じる。
ところで、将棋における実現可能な局面の数を数えると10の68乗から10の69乗の範囲であることがわかっているらしい。実現可能局面数とはつまり将棋のルール上対局中に起こりうる盤面の形がどれだけあるかという場合の数のことで、その局面に到達するまでの過程は含まずに考えた場合だ。その理由としては、仮に過程を含みにすると同一局面が何度も交差しその場合の数の測定はほぼ不可能となるからだろう。
10の68乗がどのくらいか想像できるだろうか。意外と少なく感じた僕は、コンピューターが全ての局面を数値化して将棋の全貌を明らかにしていたとしてもおかしくないのではと思った。しかし、数字の規模がどれくらいなのかを調べてみたところ、宇宙にある原子の数が10の80乗と言われているそうでそれに少し及ばないくらいの数であることがわかった。将棋の9×9の盤面には小さな宇宙が広がっているようだ。
将棋というゲームがいつから存在しているのか詳しくないが、何百年あるいは何千年もの間人々に嗜まれてきたゲームが今なお研究され続けていること、そしてそれが人間の手によって作られたルールであることには本当に驚かされる。たまたま小さい時に将棋を始めるきっかけに出会い、それを今まで続けてきて良かったなと思う。将棋を指していると、その膨大な歴史に裏付けられた奥深さを味わえるとともになんだか自分もその一部に加われるような気がする。
自粛期間となり在宅時間が多くなった今年は、オンライン将棋を本格的に始めてみることにした。集中力が高まる感覚、ひらめきの感覚、勝ったときの嬉しさ、負けたときの悔しさはどれも特別だ。将棋というゲームでは、たった一手で形勢が覆ってしまうことはざらにある。最善手を指し続けても負けてしまうことがある中で、一度の失敗は命取りになる。しかし、人間に失敗はつきものであるから、本当に大事なのは失敗を連続させないことなんだと思う。
僕は割と負けず嫌いな性格で対極中の失敗を引きずりがちだった。でも最近は冷静さを保つ訓練だと自分に言い聞かすようにしている。そうすると不思議なもので棋力も少し上がってきたりする。失敗後の粘りはかっこ悪く見えて意外と重要なことだったりするのだ。まあそう簡単に勝てるゲームではないので、負けるたびに悔しい思いが煮えたぎるのは事実だが、きっとそれも将棋の味わい深さ。
先月初段になることができたので、二段への昇段が次の目標だ。今以上に将棋の面白さをどんどん掘り進み、ひとつひとつの局面を楽しみながら将棋を指していけたらなと思う。
それではよろしくお願いします。2六歩!
追記1:2020年9月、二段に昇段。三段は定石をもっと覚えないと厳しいかな。
追記2:2021年8月、三段に昇段。どうした!?
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ナルトに登場するキャラクターを僕がランキングにするなら、シカマルはきっと上位に食い込んでくる。めんどくさがりだけど仲間思いが強く頭脳明晰なシカマルは、派手な忍術を使う忍びよりも断然かっこいい。師匠の吾妻さえシカマルとの将棋に勝ったことがないくらい、瞑想後のシカマルはどうやら最強のようだ。僕の場合、課題後に息抜きとして指す対局では勝率が高いが、休日の午後に長時間だらだらと指す対局は負けこみやすいことが経験則でわかってきた。集中力がその一瞬の棋力を大きく左右する。