ボストンの公共交通機関MBTAとは?

 アメリカ留学は車がないと大変だ、という噂をよく耳にするかもしれない。ハリウッド映画では高校生が車で登校したりするシーンはざらにあるし、アメリカ = 車社会 というイメージはまさしくその通り。では車の免許がなくてはアメリカで生活ができないのかというと、そんなこともない。少なくとも東海岸側、ここボストンという街においては、公共交通機関を利用することでそういった不便さの大概は解決できる。

 MBTAとはつまり、Massachusetts Bay Transportation Authority(マサチューセッツ湾交通局)の略。

 MBTAはさらに省略されてTの愛称で親しまれていて、ダウンタウンから約半径10km以上を網羅している。ボストンは歩いて回れる都市とも呼ばれるほどコンパクトにまとまっているので、これだけの範囲を簡単に移動できれば普段の生活やちょっとしたお出かけに困ることはほとんどない。また、コミュッターレールという別の特急電車を利用すればさらにボストン郊外まで行動範囲が広がり、エムトラック等の快速電車を利用すればニューヨークやフィラデルフィアなど他の主要都市まで移動することもできる。

 今回は留学生活で最も利用するであろう 「T」にフォーカスしてお話していきたい。

Charlie Card を取得しよう

 ボストンに着いてまずやるべきことはチャーリーカードの取得。チャーリーカードとは、日本でいうSuicaやパスモのことで、ボストンの電車やバス両方に使える。無料で発行できて記念にもなるので、長期滞在する留学生だけでなく観光できた方にもおすすめだ。確実な入手方法は、Downtown Crossing 駅にあるチャーリーカードストアの窓口に行くこと。カウンターの後ろにいる駅員さんに “Can I get a Charlie Card?” と聞けば必ずもらうことができる。

 他にも、比較的大きな駅であれば駅員さんが余分に持っていることがある。いつしか僕がカードをなくしてしまったとき、ダメもとで駅員さんに尋ねてみたことがあった。すると、”ちょうど俺予備で持ってるからこれを使えよ!” とポケットから出してくれた。

 チャージの方法は実に簡単。駅にある券売機にカードをさして現金でもクレジット・デビットカードでも支払うことができる。日本で電車に乗り慣れた方であれば基本困ることはないが、タッチパネルの感度が日本のそれに比べて著しく劣るので執念深くイライラせずにタッチし続ける必要がある。

 また、セブンイレブンでも “Can I load $20 with my Charlie Card?” と聞けば入金してくれるところはあるが、店員さんがそのプロセスを知らない場合はやってもらえない。注意点としては、セブンイレブンでの支払いにチャーリーカードは使えないということ。Suicaとは違って入金はできても電子マネーとして利用することはできない。

 料金設定は、日本のような何駅分乗ったかではなく、乗車した回数に基づいている。つまり、一駅だけ乗っても路線の端から端まで乗っても料金は変わらない。一回の乗車には電車$2.40、バス$1.70がかかる。$90.00で1ヶ月乗り放題となるMonthly Passの購入が最もお得なディールで、他にも1日乗り放題、1週間乗り放題のパスがあるので、利用頻度に合わせてある程度運賃を抑えることは可能だ。

 また、現地の学生であれば学割として11%ディスカウントしてもらえるので、大学のホームページあるいはMBTAのホームページを確認してみるといいと思う。

 長期利用が予定される方は、MBTAのホームページで自分のアカウントを作っておくことをお勧めする。メリットとしては、①オンラインでの購入と自動更新が可能、②カードを紛失した場合入金していた額を新たなカードに転送できる、③カードのデザインがカッコよくなる、の3つ。

こちらは通常のチャーリーカード。真ん中のおじさんがチャーリーさんなんだとか。
会員のカードはよりシンプルですっきりとしたデザインに。

バスを利用してみよう

 バスの乗車時には、必ず運転手側のドアから乗りカードをタッチして座席につく。降車時には下りる意思を伝えるボタンを押してから下り際にThank youと一声いうのがマナー。中には電車を降りる時に言う人もたまにいるが、バスを降りるほとんどの人は必ずと言っていいほど何か一声をかけている。Have a good one!とか。

 バスの利用にあたって一番難しいのは、目的のバス停あるいはバスを見つけることかもしれない。同じバス停に停まるバスでもバスの番号によって行き先が異なるので、不安な場合は運転手さんに ”Does this bus go to ~?” と確認するのがいいと思う。

 ボストン郊外で夜遅く走るバスはたまに正規の道順を走ってくれない時がある。運転手も早く仕事を終えて帰りたいのか、バス停をいくつかショートカットしようとする。抗議する勇気と交渉力がなければ直ちに降りて乗り換えるかそこから歩くしかない。その時間帯を避けるのがベストだが、慣れれば常習犯の運転手を特定できる。逆に、無料で載せてくれる太っ腹な運転手もたまにいらっしゃる。

 また、電車は比較的時間通りに発着するが、バスは30分以上待つなんてことはザラにある。移動手段がバスの場合は、時間に余裕を持って行動することをお勧めしたい。

Commuter Rail と MBTA Red Line の乗り換えができる South Station。ニューヨークやシカゴに行くときのバスが発着するのも大抵ここ。郊外とボストン都市部、そして周辺の主要都市をつなぐ親分的な駅、だと個人的には思っている。

電車に乗ろう

 次に電車。駅には大きくTと書いてある看板がついているのでわかりやすいと思う。基本的に、ボストン市街地にある駅のホームは地下にあり、郊外になるにつれてホームが地上に現れてくる。路線は計4つあり、それぞれグリーン、レッド、ブルー、オレンジと名付けられている。

 ボストンの路線に詳しくなってくるとどの色に乗っているかで大体どの方面に住んでいるかが分かるようになる。治安の良さや車両環境などを総合的に比較すると、ブルー < グリーン < レッド < オレンジ だろうか。あくまで個人的な見方として参考にしてほしい。

 グリーンラインは、チャールズ側に並行しながらボストンの西側に伸びるボストンで最も歴史のある路線だ。ゆったりとした雰囲気のあるベッドタウンとボストンの市街地を結んでいるせいか電車も比較的ゆっくりと進む。停車する駅が最も多く、そのうち3つはボストン大学の駅なので学生の数も多い。僕はホームステイしていた時にグリーンラインを利用していたが、気をつけたいことがいくつかある。

 まず上りの注意点。朝の通学通勤ラッシュはかなり過酷だということ。始発駅から乗らない限り座席に座れることはないくらい車内はぎゅうぎゅう。車掌さんがこれ以上乗客を乗せられないと判断すると、なんとそれ以降の駅では車両を止めてくれない。ほとんどの人がボストンの中心地まで乗るので、自己申告をしない限り途中の駅では降りることができない。もし車両が止まったとしても人混みをかき分けている間に乗り込む人が反対側から流れ込み降りるのは一苦労だ。

 グリーンラインの小さな駅には改札がなく、乗車時には車内の運転席横にある機械にカードをタッチしなくてはいけない。しかし、朝は乗客が全員タッチする時間がないので電車に乗り込む時に頭の上にチャーリーカードを掲げて ”私Monthly Pass持ってます” と車掌さんにアピールする人が多い。これだと実質無賃乗車もできてしまうのだが、そこはきっと暗黙の了解。認識としては、改札がない場合は車両内でカードのタッチをし、朝の忙しい時間帯のみタッチは任意、で大丈夫だと思う。

 次に降りの注意点。グリーンラインは4つに枝分かれしそれぞれ別の方向に行くため、目的地にあった路線に正しく乗車する必要がある。しかし、車掌さんの気分なのかなんなのか、乗っている途中で行き先が変更されてしまうことがよくある。大抵は車内アナウンスで行き先の変更を知らされるが、寝てさえいなければリスニング力に自信がなくても大丈夫。周りの乗客が急にため息をついたり文句を言い始めたら、それは乗り換えなくてはいけない合図。

 僕は居眠りから目を覚ました時には停まっている電車に独りだった、という経験をしたことがあり、、、。帰りは乗客の人数が少ない時も多く、そういった場合もやっぱり車掌さんは全ての駅に止まってくれない。次の駅で降りたい場合は、事前に車掌さんに伝えておくか、車内に設置してあるボタンを押そう。

平日の夕方、市内に向かって走行するグリーンラインの車両。英語では、上りの電車をinbound、下りをoutbound と言う。

 他のカラーの路線は比較的難易度は低め。すべての駅に止まってくれるし、改札がない駅もない。レッドラインの下りだけは路線が2つに枝分かれしていて、車両の行き先と自分の目的地が一致しているかを確認しないといけないが、途中で変更されることはないので安心だ。

まとめ

 ボストンで初めて乗った電車がグリーンラインで、最初の3ヶ月間毎日利用していたということもあり、今でもグリーンラインに乗ると当時のことを思い出す。四つの主要路線の中で一番癖の強いグリーンラインは、やっぱり驚きがあちこちに隠されている。日本では絶対にないトラブルがこちらでは日常として起こり得るから、自ずと日本の交通機関JRの完成度の高さに気づかされる。ただ、留学にハプニングはつきもの。そういう小さなことも楽しんでいけた方が結果としては楽しい留学生活になるのかもしれない。快適な環境を飛び出して未知の場所へとダイブする、それは留学の醍醐味でもあるのだろう。

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